Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
恵日寺文化は、ちょっと、黄昏の道すがらでは、手におえない。ゆうに一日二日の巡遊の価値はあろう。磐梯修験の巡回路をあるけば、附近、なお史蹟仏跡は多そうである。四道将軍時代の古墳群だの、先住民族のエゾ穴だの、さかのぼると、考古学地層まで入ってしまう。
なにしろ、われわれの足もとは、もう真っ暗なのだった。平安期らしいすがたと線のよい碑があったが、それさえ、夕月の光をたよりに、撫でまわして見る始末。スケッチ帖を手に、夜を忘れている健吉さんをうながし、村役場の人たちに礼をのべ、大寺村のわびしい灯影に別れて帰る。
振返ると、磐梯山と猫間ヶ嶽の山稜に、ほんのぽっちり、夕陽の色が、暮れ残っていた。当分、雨気はない。空は凄いように吹き研がれ、夕月が、車を追っかけてくる。
そのうちに、前の車が急に停まった。星野記者が、フィルムを入れ代えたとき、碑壇か何処かへ、それを置き忘れて来たという。――そこで後へ引っ返したその一台を、途中で待とうと、こちらはスピードを落として先へ走っていた。ところが、引っ返し組は、それきりで、なかなか追いついて来そうもない。時々停車してみたり、また、あるいは故障でもと案じたり、もしやと山の裾野芒に、身ぶるいしたり、仕方なしに、月を観賞したりしていたが、やって来ない。