Japanische Klassiker mit Furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme
二
こうなると、一種の魔法といってもよい。もちろん、彼に訊いたところで、その説明をあたえないのは知れ切っているので、誰もあらためて詮議する者もなかったが、彼はどうもただの人間ではないらしいという噂が、諸人の口から耳へとささやかれた。
「蛇吉は人間でない。あれは蛇の精だ。」
こんなことを言う者も出て来た。
二
人間でも、蛇の精でも、蛇吉の存在はこの村の幸いであるから、誰も彼に対して反感や敵意をいだく者もなかった。万一彼の感情を害したら、どんな祟りをうけるかも知れないという恐怖もまじって、人々はいよいよ彼を尊敬するようになった。かの股引の一件があってから半年ほどの後に、蛇吉の母は頓死のように死んで、村じゅうの人々からねんごろに弔われた。
母のないあとは蛇吉ひとりである。かれはもう三十を一つ二つ越えている。本来ならばとうに嫁を貰っているはずであるが、なにぶんにも蛇吉という名がわずらいをなして、村内はもちろん、近村からも進んで縁談を申込む者はなかった。彼は村の者からも尊敬されている。うわばみの種の尽きない限りは、その生活も保証されている。しかも彼と縁組をするということになると、さすがに二の足を踏むものが多いので、彼はこの年になるまで独身であった。