Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
その証拠に、通りへ出ても、方角が皆目わからなかつた。どこをどう通つて、荻窪の家まで辿りついたか、翌朝になつて、まるで覚えがなかつた。そして、たゞ、ビールのコップを手に、憂鬱に黙りこんでいる弟の顔が眼に残つているだけであつた。彼は、またどうして、事の序に、弟の居所をたしかめておく気にならなかつたか、それが今になつてたゞひとつ後悔の種となつた。
父は、ざつと彼の報告を聴いて、
「そうか、そんなことなら、まあよかつた。破廉恥罪と違つて、単なる青年の軽挙妄動だな。まさか、ほんものゝ赤じやあるまい」
と、案外、わかりのいゝところをみせた。しかし、その後がよくなかつた。
「勝手に家を飛び出すなら、一切、家に迷惑をかけんぐらいの決心が必要だ。都合のいゝ時だけ親に背中を向け、ちよつと困ると親の名前を出すなんていうのは、そもそも、意気地がないじやないか」
彼は黙つているつもりであつたが、ちよつと弟をかばう気になり、
「お父さん、それや違いますよ。困つたから親の名前を出したんじやないんです。嘘をつく必要がなかつたから、聞かれたことを、正直に答えたんでしよう。あいつは、偏屈は偏屈ですが、家を出て行つたことに対して、お父さんも、そう感情的におなりになる必要はないと思いますね」