Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
その代り、こいつを金にしてくれ。いくらに踏むか、おじさん」
彼が、胴巻から取り出したのは、金無垢と一と目でわかる女の腕環であつた。
「これや、なんや。ようでけとるけど、鍍金やな」
「よせやい、じいさん、ふざけないで、早くしろよ。買うのか、買わないのか」
「いくらやつたら、よろしおまつか?」
「目方をかけたらすぐわかるじやないか。二十八匁きつかりだ。三万ならいゝだろう」
古着屋の唇がヒョットコのように伸び、
「よろしおま、信用しときまひよ」
京野等志は、一時間後に、出張先から帰る一会社員の風体に早変りをした。実をいうと、彼は、鹿児島へ上陸するとすぐに、復員局の事務所で荻窪の家の処番地が変つていないことだけをたしかめておいて、早速、リュック・サックにつめたろくでもない品物を一切売り払つた。収容所を出る時、時計も万年筆も捲きあげられ、いよいよ乗船の間ぎわに、サイゴンの桟橋へ駈けつけて来たポーレットが、別れの挨拶をしに頬を差出したとたん、飛行靴の胴へ手早く落し込んだのが、この金の腕環で、その時は、なんの意味ともわからず、たゞ紀念にというほどの感傷を、あの黒くうるんだ瞳のなかに読んだきりであつた。