Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
と、南条己未男は、ずばりと言つた。
「あら、いやだ。そんなことこゝじや言わない筈だつたわ。兄さん、このひとつたら、いきなりあたしに結婚してくれつていうんだけど、そんなこと、変ねえ。お友達として、お互にまず及第かどうか試してみるのが肝腎だわ。それなら、おつき合いしましようつて約束なのよ。それでいゝわねえ」
真喜は、それを、はにかみひとつみせず、男二人の前で、ずけずけと言うのである。京野等志は、もうそんなことには驚かなくなつている。
「僕はそういうことには、いつさい干渉しないよ。第一、そんな問題は、第三者に、なにひとつ、わかる筋合のもんじやないさ。南条君、蜜蜂が見たければ、あすの朝、箱をあける時間に来ないか。六時キッカリにあける。じや、失敬だけど、僕は病人のそばへ帰る。ゆつくりやすみたまえ」
二人をホテルの玄関口まで送つて、彼は、大股にもと来た道を引つ返した。
もう日がかげつて、あたりの空気が、肌にひえびえとするくらいであつた。
と、やがて、この土地特有の霧が、山裾からもくもくと這上つて来る。
「いけねえ」
と、彼は口の中で呟いた。
霧の時は、早く窓をしめないと、病人が息苦しいというのである。