Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
この長閑な風物に、京野等志の心はもうなごむことはできなかつた。彼は、一人の女性の、物思わしげな風姿を心に描き、自分は果して、ほんとうにその女性の幸福を願つているのか、それともまた、いくらかその不幸を念じているのか、そのけじめがつかなかつた。いまだにまつたく執着がないとはいえぬ女、止むを得ぬ事情でついに自分から離れ去つた女の運命に、幸あれかしと祈ることはまことに当然のようであつて、彼にはすこし偽善めいて感じられるのである。それなら、どこまでも彼女がみじめな境遇に追い込まれることを望むかといえば、それはまさかどう考えてもそんなはずはないと言いきれる。たゞ、はつきり自分にもわかつていることは、彼女の現在がそれほど満ち足りた生活ではないということを、うすうすながら知るにつけて、それを彼女のために悲しむ一方、たしかに矛盾したことではあるが、自分のためには、なにか、眼の前に、ひとつの期待のようなものが湧きあがつて来たことである。
この複雑な感情は、すでに、小萩からの便りを読んだ瞬間から、彼の胸をかき乱していた。彼を前後の考えもなくこの島立村に運んだのも、その感情の発作的なあらわれであつた。