Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
その前には生身の弥陀もついに現われずにいなかった。一人の見知らぬ比丘尼が彼女の側に立って、百駄の蓮茎を注文し、自ら蓮糸をとった。天女のような一人の美女が、その蓮糸から美しい曼陀羅を織り出した。晩の八時から明け方の四時まで、灯火は油にひたした藁束であった。織り上がると美女は立ち去った。比丘尼は画像の深義を説いてきかせた。一体あなたはどこのどなたでいらせられますかと不思議そうに姫が聞く。その答えに、わたしがこの極楽世界の教主、これを織ったのが弟子観世音、お身の心のふびんさに慰めに来ました。
それは夢みる心の幻想である。大切にしまってある原本曼陀羅を調べて見ると、麻糸と絹糸との綴れ織りであったという。すなわち蓮糸で織ったということは嘘なのである。しかし蓮糸で布が織れるものでないということは、昔の人にも明らかなことであったろう。蓮糸でなくてはならないのは幻想の要求である。蓮糸で織ったことが嘘であってもこの幻想の力は失せない。
金堂の気味悪い薄暗がりのなかで、わたくしは金網越しにつくづくと曼陀羅をながめた。それは東山時代の模写であって、画としては優れていない。