Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
たとえばこの微笑をモナリザの微笑に比するのは正当でない。なるほど二者はともに内部から肉の上に造られた美しさである。そうして深い微笑である。しかしモナリザの微笑には、人類のあらゆる光明とともに人類のあらゆる暗黒が宿っている。この観音の微笑は瞑想の奥で得られた自由の境地の純一な表現である。モナリザの内にひそむヴィナスは、聖者の情熱によって修道院に追い込まれ、騎士の情熱によって霊的憧憬の対象となり、奔放な人間性の自覚によって反抗的に罪悪の国の女王となった。この観音の内にひそむヴィナスは、単に従順な慈悲の婢に過ぎぬ。この観音の像が感覚的な肉の美しさを閑却して、ただ瞑想の美しさにのみ人を引き入れるのはそのためである。
モナリザの生まれたのは、恐怖に慄える霊的動揺の雰囲気からであった。人は土中から掘り出された白い女悪魔の裸体を見て、地獄の火に焚かるべき罪の怖れに戦慄しながらも、その輝ける美しさから眼を離すことができないという時代であった。しかし夢殿観音の生まれたのは、素朴な霊的要求が深く自然児の胸に萌しはじめたという雰囲気からであった。そのなかでは人はまだ霊と肉との苦しい争いを知らなかった。