Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
ほのかに微笑の浮かんでいるお顔、胴体に密着している衣文の柔らかなうねり。どこにもわざとらしい技巧がなく、素朴なおのずからにして生まれたような感じがある。がそれでいてどこにも隙間がない。実に恐ろしい単純化である。顔の肉づけなどでも、幼稚と見えるほど簡単であるが、そのくせ非常に細かな、深い感じを現わしている。試みに顔に当たる光を動かしてさまざまの方向から照らして見るがよい。あの簡単な肉づけから、思いもかけぬ複雑な濃淡が現われてくるであろう。こういう仕事のできるのは、よほどの巨腕である。そのことはまた銅の使いこなし方にも現われている。いかにもたどたどしい鋳造の仕方のように見えていながら、どこにも硬さや不自由さの痕がない。実に驚くべき技術である。この香薬師像は近年二度目の盗難に逢った。
帰りは春日公園の中の寂しい道を通った。この古い森林はいつ見てもすばらしい。今はちょうど若葉が美しく出そろって、その間に太古以来の太い杉や檜の直立しているのが目立つ。藤の花が真盛りで、高い木の梢にまで紫の色が見られた。鹿野苑の幻想をここに実現しようとした人のこころもちが、今でもまだこの森の中にただよっているという気がする。