Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
それはわたくしには驚きであった。しかし考えてみると、われわれはみなかつては桃源に住んでいたのである。すなわちわれわれはかつて子供であった! これがあの心持ちの秘密なのではなかろうか。
こんな心持ちに気をとられて、本堂のなかに横に一列に並んでいる九体の仏には十分注意が集まらなかった。Z君に言われて、横に長い須弥壇の前の金具をなるほどおもしろいと思った。仏前に一つずつ置いてある手燭のような格好の木塊に画かれた画もおもしろかった。色の白い地蔵様もいい作だと思った。しかし何よりも周囲と調和した堂の外観がすばらしかった。開いた扉の間から金色の仏の見えるのもよかった。あの優しい新緑の景色の内に大きい九体の仏があるというシチュエーションは、いかにも藤原末期の幻想に似つかわしい。
――もうよほど昼を過ぎていたので、庫裏にいた妻君の好意で、わたくしたちは、欠け茶碗に色の黒い飯を盛った昼飯を食った。それが、Z夫人には気の毒だったが、今日の旅にはふさわしかった。
こんなわけで、帰りは近道をしたけれども、奈良へ帰ったのはもう四時過ぎであった。そうしてすぐその足で、浄瑠璃寺とはまるきり気分の違った東大寺のなかへ、しかも戒壇院へ馳けつけた時には、あの大きい松の立ち並んでいる幹に斜めの日が射し、厳重な塀に囲まれた堂脇の空地には黄昏を