Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
博物館を午前中に見てしまおうなどというのは無理な話である。一度にはせいぜい二体か三体ぐらい、それも静かに落ちついた心持ちで、胸の奥に沁み込むまでながめたい。
N君はそれをやっているらしい。入り口でパッタリ逢った時に、N君はもう見おえて帰るところだった。「このごろは大抵毎朝ここへ来ますよ、気分さえよければ」と彼は言った。朝の早いN君のことだから、まだ露の乾かない公園のなかを歩きまわった揚句、戸が開くと同時に博物館のなかへはいって、少し汗ばんだ体にあの天井の高い室の冷やりとした空気を感じながら、幾時間でもじいっと仏像の前にたたずんでいるのであろう。そういう気ままな生活をもう一月もつづけているN君に対して、あわただしい旅にあるわたくしは何となき一種の面憎さを感ぜずにはいられなかった。
N君に別れて玄関の石段をのぼり切ると、正面の陳列壇のガラス戸があけてあって、壇上の聖林寺十一面観音の側に洋服を着た若い男が立っていた。下にいる館員に向かって「肉体美」を説明しているのである。ガラス戸のあいているのはありがたかったが、この若者はどうも邪魔になってならなかった。