Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
「どうした」
「獲物か」
斎藤孫次郎と、紙屋十郎兵衛とは、一緒に叫びながら戻って来た。
そこは熊笹に蔽われた崖下の径で、片側に楢の若木の疎林があるのと、あまり高くはないが屏風のような崖が迫っているため、吹きつけてくる雪は膝を越すほど積っていた。
伊兵衛は鉄砲を左の脇に抱えたまま、身をかがめて、獣の足跡でも探るように、じっとなにかを見戍っている。
「なんだ功刀、熊か、猪か」
戻って来た孫次郎がそう囁きながら覗きこむと、伊兵衛は雪の上を指さしながらここを見ろと云った。
血痕が雪を染めていた。
伊兵衛の示す指を追って行くと、崖のひとところが崩れて、熊笹の密生している場所から、径を越して、楢の疎林の中まで、その血痕は点々と尾を曳いていた……先に行った二人が気付かなかったのは吹きつける雪に埋れていたからで、彼らが雪を踏返したため、はじめて伊兵衛の眼についたのである。
「手負いだな。しかも大物だろう」
「熊だぞこれは」
「そうかも知れない。だが……」
二人は早くも意気ごんだが、伊兵衛はなにか腑に落ちぬものがあるようすだった。
彼らが猟をするために、この鬼鉾山へやって来たのは九時過ぎであった。