Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
二の三
吹雪は大きな力で枯林を襲い、梢を揺りたて、地を吹き捲り、あらゆるものを灰色の翼で薙ぎたてながら去って行く。
――この吹雪のなかで何ごとがあったのだろう。
伊兵衛は盲無念という男を思い、また遠くこの山中へ来て死んだ四人の身上を思いやった。
――なにがあったのだろう。
二の三
来栖道之進は、国老津田頼母から迎えの書面を読んでいた……ちょうど昼の食事をおわったところで、読んでいると母が茶を運んで入って来た。
「お出掛けですか」
母は道之進の側へ茶を置きながら坐った。
彼女は名を曽女といった、同家中の足軽組頭の娘で十六のとき来栖家へ嫁し、十九で道之進を生んだが、二十五歳のときに良人に死なれて以来、ずっと寡婦を通しながら立派に道之進を育てあげてきた。
長男の顔は母に似るというが、道之進の美しい容貌はそのまま母写しなのであろう。曽女は小幡家中でも評判の美人であったが、どこかしら陶器のような冷たさがあり、気質にもそれを持っていた。……切り口上の言葉つきにも、いつかしら微笑している口許にも、なんとなく人を見透すような、皮肉なものが漂って、それは一人子の道之進にとってさえ近づきにくい、冷たい疎隔を感じさせた。