Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
五の三
「なかだち役を買ったわしにも、こんなことが起ろうとは信じられなかった。しかし功刀……人間が心をむきだしにするときは、善悪にかかわらず恐しい力を現すものだな」
「それはどういう御意でございますか」
「山県先生を幕府へ売るための、訴状を書いたのは道之進だ」
「…………」
「彼は、おのれの立身のために、先生に師事するごとく見せていた。わしの藩政改革が成功するとみて、わしのために働いていた。しかし事態が変り、幕府が、先生に強圧の手をのばし始めると知るや、即座に身を翻してわしから去り、松原郡太夫に一味して先生を売ったのだ……そのもとの妹との縁談を破った理由もそこにある。人間が心をむきだしにする時のすさまじさ、功刀、そのもとはこれをすさまじいと思わぬか」
五の三
伊兵衛はながいあいだ黙っていた。
彼の頭は濁流の渦巻くように混乱して、しばらくは考えを統一することも困難だった……彼は道之進の明敏な質に一目おいていた。道之進の才子肌な点には不快を感じても、犀利な頭脳と進退のみごとさには敬服していた。
――気に喰わぬやつだ。しかし人物としては一流にぬきんでているだろう。
そう信じていた。