Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
六の一
伊兵衛はその女のように美しい顔を、心から忿怒と侮蔑の眼で睨み下しながら、それでもなお、道之進の悲鳴の中からでも、底を突いた本音が出ることを希望した。
「道之進、立て!」
叫びながら大剣の柄へ手をかけた。
刹那! 道之進は身を躍らし、縁台を伊兵衛のほうへはねあげて、毬のように外へとびだした……伊兵衛は一刀その背へあびせたが、届かなかった。それで、逃さじと追って出た。
あとにははね飛んだ提灯が、生物のようにめらめらと燃えだした。
六の一
鼬のように素早かった。
背をかがめて、疾走していた道之進は、用水堀の土橋の袂まで来たとき、足袋跣の足を、凍てた雪に踏み滑らせて、だっと顛倒した。
――しまった。
はね起きようとするうしろへ、
「来栖、動くな!」
と叫びながら伊兵衛が殺到した。
道之進は起きようとした姿勢をそのまま、本能的に防禦のかたちに振り向けた……つり上った眸子と、まくれた唇のあいだから剥きだしになっている歯と、暴々しく喘ぐ息と……伊兵衛は路上の雪の仄明りにそれを見やりながら、
――これがこいつの正体だ。
――小幡きっての美貌も、織田家随一と称された俊敏の才も、ひと皮剥けばこんな卑しい、哀れな見下げ果てたものだったのだ。