Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
その根本に、雪をかぶって倒れている者があった……伊兵衛は火縄を消して鉄砲を孫次郎に渡しながら走り寄った。
引起してみると、若い見慣れぬ武士だった。
「やっ、人間か」
「斬られている」
孫次郎と十郎兵衛は息をのんだ。
伊兵衛は手早く傷所をみた。若い武士は脇腹を突かれていた。そしてもう絶息していた……そのとき、うしろから覗きこんでいた孫次郎が、なにをみつけたか伊兵衛を押し除けて、
「おいちょっと見せろ」
と前へ乗出して来た。そして死者の顔をじっと見戍っていたが、急にあっと声をあげた。
「数馬、数馬だ」
「……貴公、知っているのか」
「知っているとも。江戸屋敷の近習番で、大沢数馬という男だ。おれとは鈴木次郎太夫先生の道場で一緒に剣法を習ったこともある、江戸屋敷では指折りの男だ」
「それはたしかか。江戸藩邸の者がこんな処へ来るのはおかしい」
「いやたしかだ。数馬に相違ない」
「しかし死顔は変るという、よく似た他人はあるものだぞ」
十郎兵衛がしきりに念を押した。
そのとき伊兵衛の頭に、ふたたびあのときの侍たちの姿がうかんできた。吹雪のなかを、ひどく急いで登って行った姿が……。