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Japanische Klassiker mit Furigana

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よあけのつじ

夜明けの辻

山本 周五郎

Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

それで兄は……赦してやった」

伊兵衛はそっと妹の肩へ手を置いた。

「あいつは、おまえにも顔向けのならぬことをした。けれどもう忘れてやれ、兄も赦したんだ。おまえも忘れてやれ」

「……はい」

「分ったらいい。では……母上を頼むぞ」

佐和は感動を籠めた眼をいっぱいに瞠いて兄を見上げた。伊兵衛はやさしく妹の肩を叩き、にこっと笑って手をあげた。

「さらばだ」

「……どうぞ御健固で」

伊兵衛は頷いた。もういちど頷いた。それから大きく右手を振って、力のある足どりで、坂を下りて行った。

めざすは八塩の温泉を越えて秩父路へ、そして江戸へ、日輪のさしのぼる東へ、東へ。

佐和は溢れくる涙を押し拭い、押し拭い、いつまでも見送っていたが、やがて兄の姿が林を廻って消えると、静かに家のほうへ引返して来た……するとちょうどそのとき、反対のほうから丘を駈け登って来た旅装の武士が一人、佐和の姿を認めると、あっと叫びながら走り寄って来た。

「佐和どの」

「…………」

振返った佐和は、笠を脱った相手の顔を見るなり、たじたじと身を退いた。

「……来栖さま」

それは来栖道之進であった。彼は脱った笠を左手に持つと、蒼白めた顔に、両眼を熱く光らせながら進み寄った。