Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme

Aozora Bunko

「知らないっ」

朱実は遂に、

「あたし、大きな声を出しますよ。離さないと、みんなを呼ぶからいい」

「呼んでみい! ……。この棟は母屋から離れているし、誰も来るなと断ってあるのだ」

「わたし帰ります」

「帰さん!」

「あなたの体じゃありません」

「ば、ばかっ。……おまえの養母に聞け、おまえの体には、おれの手から身代金ほどの金が、お甲へやってあるのだ」

「おっかさんが私を売り物にしても、私は売った覚えはない。死んだって、嫌な男なぞに」

「なにっ」

緋の炬燵ぶとんが、朱実の顔を押しかぶせた。朱実は心臓のつぶれるような声をあげた。

……呼べど、呼べど、誰も来なかった。

ひんやりと薄陽のあたっている障子には、何事もなげに、松のかげが遠い潮鳴りのように揺れているに過ぎない。外は、あくまで静かな冬の日であった。チチ、チチ、とどこかで、人間の無残な振舞いとはおよそ遠い小鳥の声がしていた。

……ほど経って。

そこの障子のうちで、わっと号泣する朱実の声がもれた。

しいんとして、ややしばらくのあいだ、人の声も気はいもしないでいると思うと、清十郎が青じろい顔を持って、ついと、障子の外へすがたを現わした。