Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
母がいうので、又八は無下にもできなかった。元日か二日が過ぎたらすぐ別れようと思う。だが、婆も爺も、先の短いせいか、仏性があるというのか、神社仏閣というといちいちお賽銭を奉ったり、長々と祈願をこめたりばかりしていて、今日も、この住吉だけで、ほとんど一日暮れてしまいそうだ。
「はよう来ぬか」
鈍々たる足つきで、顔をふくらませて来る又八をながめて、お杉隠居は、若い者のように焦れた。
「勝手なことをいってら」
又八は、口返答して、少しも足を早めないのだ。
「人を待たせる時は、いくらでも待たせておいて」
「何をいうぞ、この息子は。神さまの霊域へ来たら、神さまをおがむのは人間のあたりまえなことじゃ。おぬし、神にも仏にも手を合せたのを見たことがないが、そういう量見では、行く末が思いやらるる」
又八は、横を向いて、
「うるせえな」
それを聞き咎めてまた婆が、
「何がうるさいのじゃ」
初めの二、三日こそ、母子の愛情は蜜より濃やかであったが、馴れるにつれ又八が、事ごとにたてを突いたり老母を小馬鹿にしたりするので、旅籠に帰るとお杉隠居は、この息子を前に坐らせ、毎夜のようにお談義ばかりであった。