Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
執拗に、頬をこすりつけてくる。それが無数の針のように痛くて、朱実は顔を苦しめられた。
――息ができない。
朱実は、ただ爪を立てる。
その指の爪が、争ううちに、赤壁八十馬の鼻の穴を掻きむしった。鼻は獅子頭のそれみたいに朱に染まる。けれど八十馬は手を離さない。
鳥部ノ山の阿弥陀堂から、夕闇の鐘は諸行無常と告げわたっている。けれど、こうすさまじく生き過ぎている人間の耳には、色即是空の梵音も、馬の耳に念仏というものである。男女を埋めている枯れ萱の穂は、大きな波をゆり立てるばかりだった。
「おとなしくしな」
「…………」
「なにも、恐いことはないさ」
「…………」
「おれの女房にしてやろう。――いやじゃあるまい」
「……死にたいッ!」
さけんだ朱実の声の余りにも悲痛で強かったので、
「えっ?」
八十馬は、思わずいった。
「……どうして、どうして」
手と膝と胸とで、朱実は体を山茶花の蕾みたいに固くむすんでいた。八十馬はどうかしてこの筋肉の抵抗をことばで解させようとするのだった。この男はまた、こういうことに幾たびか経験をもっているらしい上に、こういう時間のあいだをも楽しむことにしているらしい。