Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
無意識に、がばと身を起した時、数日来の疲れは洗われていて、彼の頭脳は冴え切っていた。
洛内洛外の寺院の鐘が、いんいんと、無明から有明のさかいへ鳴っていた。
諸行煩悩の百八つの鐘は、人をして一年のあらゆる諸行へ反省を呼び起させる。
――おれは正しかった。
――おれは為すことを為した。
――おれは悔いない。
そういう人間が何人あるだろうかと武蔵は思った。
一鐘の鳴るごとに、武蔵は、悔いのみを揺すぶられた。ひしひしと後悔されることばかりへ追憶がゆくのである。
今年ばかりではない。――去年、おととし、先おととし、いつの年自分自身で恥じない月日を一年送った例があるだろうか。悔いない一日があったろうか。
なにか、やるそばから、人間はすぐ悔いる者らしい。生涯の妻を持つことにおいてさえ、男の大多数は悔いて及ばない悔いを皆ひきずっている。女が悔いるのはまだ恕せる、ところが、女の愚痴はあまり聞えないが、男の愚痴がしばしば聞える。勇壮活溌なことばをもって、うちの女房を穿き捨て下駄のようにいうのである。泣いていうよりも悲壮で醜い。
まだ妻はないが、武蔵にも通有性の悔いがある、煩悩がある、彼はすでに、この家を訪ねて来たことを後悔するのだった。