Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵 (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.809 Zeichen · 369 Bildschirme
しかし、片方の眼は、眼つぶしを食ったように烈しく痛むし、左の肱は、かすり傷ではあるが、そこから滴り落ちる血しおに袂が染まるほどだった。
(不覚!)
と気のついた時が、もうその不覚を身に受けていた時だったのである。彼として、こういう先手を先に取られて、手傷まで負った例は今までになかったことだろう。――けれど、これは勝負というものではない、なぜならば、武蔵には全然この老婆に対して闘志がないからである。最初から、勝つことも敗けることも考えていなかったに違いない。至って体も敏捷でないこの老婆の刃向いなどは、彼の意識にも入らないのが当然でもあった。
しかし、それがそもそも不覚というものではあるまいか。兵法の大乗的な見地から観れば、これは明らかに武蔵の敗れであり、武蔵の未熟さを、見事にお杉婆の信仰心と切っ先が、暴露して見せたものといって差しつかえなかろう。
自身、その不用意を、武蔵も、はっと気づいて、
(過った!)
同時に彼は全力を出して、なおも図に乗って来るお杉の肩を、とんと一つ、平手ではたいた。
「あっ」
四ツ這いになったお杉の手を離れて、刀は遠く飛んでいた。