Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

けれど近藤小母さんは、ここのおかみさんとは姉妹同様な仲と云っていた通りに、いきなりおかみさんの見える長火鉢を挟んでこちら側の厚ぼったい座蒲団の上に、その肥えた体を不行儀に坐り崩すと、忽ち何かおかしげな笑い話をしはじめていた。それは全くぼくとは無関係な話題であったし、初めて耳にするおかみさんの声柄や調子にしても、ぼくには何かはしたなく聞えて、自分の育った家庭で聞き馴れた日頃のものとはまるで勝手の違う雰囲気に思われた。もっともそれは後で知った事だが、近藤夫人もオテイちゃんを生むまでは洋妾であったのだし、従姉妹であるここのおかみさんも又、以前はらしゃめんかそれに似た水商売の婦人だったものらしい。従って、前身も似たり寄ったりの女同士が二人きりで気をゆるした話をしあうと、自然に以前の若いときからの調子が弾んで出るものらしかった。

ぼくには何ら関係のない年増同士の冗談ばなしをさんざん長火鉢でやっていた近藤小母さんは、やがての事、やっとぼくに就て何か語り出していた。時々、おかみさんと声をひそめてから、中廊下の蔭にしょんぼり佇んでいたぼくの方を茶の間の内から振向いて「英さん、ここへ来て、御あいさつなさい。