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Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

それを又、一体どういう心理であったものか、ぼくは仕事机の上に雑記帳を拡げて、と見、こう見、せッせと、おかみさんの顔をスケッチし初めていたのである。元よりこっち側から見える中障子のガラス越しなら、当然、おかみさんの方からも横目で見えていたにちがいない。けれどそんな思慮もなく写生した雑記帳は、机のひき出しに入れた儘、すっかり忘れていたのである。

ぼくを使いか何かに出した後で、おかみさんはさっそくぼくの机のひき出しをあらためた。そして、主人の呉竹氏にそれを示し「こんな恐ろしい子ッてありゃしない。こんな小僧はさっそく追ん出して下さい」と色を変えて迫ったものだそうである。それでも主人の呉竹氏は「まあ、まあ」という風で取上げなかったそうだが、その翌晩ちょうど遊びに来た俳友の一人に、ふとその事を相談したところ、その人も又「そういう小生意気なまねをする小僧はやはり考えものだな」という説で、一つどんな才なのか試してやろうという所から、ぼくへ向って、突然、あんな難題を命じたものだという。

それも生半可、ハイなどと答えて、即座に書かなければまだよかったろうに、正直一途に小さな智恵をしぼって書いてみせた為、それが又、よけいに悪い結果になった。