Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
ぼくにとっても、故人にとっても、お互い慙愧にたえない事でしかない。唯ぼくが十二歳当時に家出したきりだったその義兄も、三十何年振りかで、とつぜん、ぼくの芝公園八号地の当時の住居を、尋ね当てて来たことだった。ぼくもやっと、作家生活に入り出した初期の頃である。
だが、すでに両親共、この世にはいなかった。人生、おおかたは、まあそんなものであろうか。
駄稿、ここで終りとする。
ろくな記憶も、語るべき内容もないのに、四半自叙伝などと烏滸なタイトルを掲げ、気恥かしいことだった。つい、云うまじき事まで云ってしまった気がしてならない。だが、さいごに一言すれば、ぼくの青少年期は、何ともひどい辛酸をなめて来たかのようだし、読者もそう読まれたか知らないが、ぼく自身は、ちっともそんな気はしていないのである。社会も家も否みようのない時代のワクの中のものだったせいであろう。いわばぼくも、封建の子の一型だったものに過ぎない。現代の太陽族とかいう溌剌たる青年男女には、おそらく事々一笑にも値しまい。けれど人生の真価とまで云わないでも、どっちが、生命の充実とそのよろこびを持続しうるか、それはさいごの道まで歩いてみないと分るまい。