Japanische Klassiker mit Furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Lesen Sie 探偵夜話 (たんていやわ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.363 Zeichen · 277 Bildschirme
」と、佐山君は言った。
しかし、ここに一つの不審は、その後に司令部に出入りする者が曽て向田大尉の姿を見かけないことであった。大尉は病気で引き籠っているのだと、司令部の人達は説明していたが、なにぶんにも本人の姿がみえないということが諸人の疑いの種になって、大尉の葬式か、狐の葬式か、その疑問は容易に解決しなかった。ある時、佐山君が支店長にむかって、向田大尉殿はたしかに生きていると主張すると、支店長は意味ありげに苦笑いをしていた。そうして、こんなことを言った。
「狐の葬式はどうだか知らないが、向田大尉は生きているよ。」
そのうちに、十月ももう半ばになって、沙河会戦の新しい公報が発表された。町の人達の注意は皆その方に集められて、狐の噂などは自然に消えてしまった。ここは冬が早いので、火薬庫付近の草むらもだんだんに枯れ尽くした。沙河会戦の続報もたいてい発表されてしまって、世間では更に新しい戦報を待ちうけている頃に、向田大尉は突然この師団を立ち去るという噂がまた聞こえた。これで大尉が無事に生きている証拠は挙がったが、他に転任するともいい、あるいは戦地に出征するともいい、その噂がまちまちであった。