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Japanische Klassiker mit Furigana

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たんていやわ

探偵夜話

岡本 綺堂

Lesen Sie 探偵夜話 (たんていやわ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.363 Zeichen · 277 Bildschirme

Aozora Bunko

この戦時の忙がしい最中に、大尉が悠々と釣りなどをしているのもおかしい。殊に大尉は軍人にはめずらしいくらいの愛想のよい人で、出入りの商人などに対してもいつも丁寧に応対するというので、誰にもかれにも非常に評判のよい人である。その大尉殿が毎日のように顔を見あわせている自分に対して、なんの挨拶もせずに行き過ぎてしまったのは、どうもおかしい。うす暗いので、もしや人違いをしたのかとも思ったが、マッチの火にうつった男の顔はたしかに向田大尉に相違ないと、佐山君は認めた。

「わざと知らぬ顔をしていたのかも知れない。」

大尉は忙がしい暇をぬすんで、自分の好きな魚釣りに出て来た。そこを自分に認められた。この軍国多事の際に、軍人が悠長らしく釣竿などを持ち出しているところを、人に見つけられては工合が悪いので、かれはわざと知らぬ顔をして行き過ぎてしまった。――そんなことは実際ないともいえない。佐山君は大尉が無愛想の理由をまずこう解釈して、そのままに自分の店へ帰った。夕飯を食うときに、佐山君は古参の朋輩に訊いた。

「向田大尉は釣りが好きですか。」

「釣り……。」と、かれはすこし考えていた。