Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
ただし途中で、桟道を踏辷るやら、御嶽おろしに吹飛されるやら、それは分らなかったのです。
御存じとは思いますが、川越喜多院には、擂粉木を立掛けて置かないと云う仕来りがあります。縦にして置くと変事がある。むかし、あの寺の大僧正が、信州の戸隠まで空中を飛んだ時に、屋の棟を、宙へ離れて行く。その師の坊の姿を見ると、ちょうど台所で味噌を摺っていた小坊主が、擂粉木を縦に持ったまま、破風から飛出して雲に続いた。これは行力が足りないで、二荒山へ落こちたと言うのです。
私にしても、おなじ運命かも知れません。別嬪が二人、木曾街道を、ふだらくや岸打つ浪と、流れて行く。岨道の森の上から、杓を持った金釦が団栗ころげに落ちてのめったら、余程……妙なものが出来たろうと思います。
些と荒唐無稽に過ぎるようですが、真実で、母可懐く、妹恋しく、唯心も空に憧憬れて、ゆかりある女と言えば、日とも月とも思う年頃では、全く遣りかねなかったのでございます。――幼いうちから、孤だった私は、その頃は、本郷の叔父のうちに世話になって、――大学へ通っていました。……文科です。
幸ですか、如何だか、単に巡礼とばかりで、その芸妓たちの風俗から、円髷と銀杏返と云う事を見出さなかったばかりに、胸を削るような思ばかりで済みました。