Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
決して敵意は持ちません。そのいずれの感化であったかは自分にも分りません。が、とに角、その晩、二人の婦と、一ツ蚊帳に……成りたけ離れて寝ましたから。
――さあ、何時頃だったでしょう――二度めに、ふと寝苦しい暑さから、汗もねばねばとして目の覚めましたのは。――夜中も、その沈み切った底だったと思います。うつうつしながら糠に咽せるように鬱陶しい、羽虫と蚊の声が陰に籠って、大蚊帳の上から圧附けるようで息苦しい。
蚊帳は広い、大いのです。廻縁の角座敷の十五畳一杯に釣って、四五ヶ所釣を取ってまだずるり――と中だるみがして、三つ敷いた床の上へ蔽いかかって、縁へ裾が溢れている。私には珍しいほどの殆ど諸侯道具で。……余り世間では知りませんが、旅宿が江戸時代からの旧家だと聞いて来たし、名所だし、料理旅籠だししますから、いずれ由緒あるものと思われる、従って古いのです。その上、一面に嬰児の掌ほどの穴だらけで、干潟の蟹の巣のように、ただ一側だけにも五十破れがあるのです。勿論一々継を当てた。……古麻に濃淡が出来て、こう瞬をするばかり無数に取巻く。……この大痘痕の化ものの顔が一つ天井から抜出したとなると、可恐さのために一里滅びようと言ったありさまなんです。