Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
――ここで一寸念のために申しますが、この旅籠屋も、昨年の震災を免れなかったのに、しかも一棟焚けて、人死さえ二三人あったのです――蚊帳は火の粉を被ったか、また、山を荒して、畑に及ぶと云う野鼠が群り襲い、当時、壁も襖も防ぎようのなかった屋のうちへ押入って、散々に喰散らしたのかとも思われる。
女中が二人で、宵にこの蚊帳を釣った時、
(まあ。)
と浮りしたように姉が云うと、
(お気の毒だわね。)
と思わず妹も。……この両方だって、おなじく手拭浴衣一枚で、生命を助って、この蚊帳を板にした同然な、節穴と隙間だらけのバラックに住んでいるのに、それでさえそう言った。
――実は、海岸も大分片よった処ですから、唯聞いたばかり、絵で見たばかりで様子を知らない。――宿が潰れた上、焚けて人死があった事は、途中自動車の運転手に聞いて、はじめて知ったのです。
(――それは少し心配だな。)
二人の婦も、黙って顔を見合せました。
可恐しい崖崩れがそのままになっていて、自動車が大揺れに煽った処で。……またそれがために様子を聞きたくもなったのでした。
運転手は悍馬を乗鎮めるが如くに腰を切って、昂然として、