Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Lesen Sie 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.012 Zeichen · 245 Bildschirme
『意外ですな。実に』
『わしも、おどろいたが、悪僧とはいえ、さまでのうそは申すまい。……はなしのつじつまも、合うておるし』
雨夜坊主の覚然から、光遠が聞いたというはなしは、もっと詳しかった。
八坂の覚然は、祇園女御を、ふと垣間みて、欲情に駆られた。だが、上皇の思い者なので、たやすく近づけないでいた。この桧垣の家を中心に、上皇は下淫を愛し、かれは上淫に妄執していたかたちだった。朝に夕につけまわし、覚然はついに悪僧の本領をあらわして、暴力による思いをとげてしまった。
上皇は、まれにしか、お通いにならない。覚然の寺とは、目と鼻のあいだである。しかも上皇は、六十路に近いお年だし、覚然はそのころまだ三十代の僧侶で、しかも美僧であったという。祇園女御が、こころと、肉体との、二つの本能に立ち迷いつつ、夜をかさねるごとに、どっちへ、愛情をひかれて行ったかは、いうまでもない。
そのうちに、時雨の一夜。
このような雨夜に、上皇のお通いもあるはずはなし――と、心をゆるして、祇園女御の門へ合図をして忍びかけていたところを、あいにくと来あわせた上皇に見とがめられ、扈従の武者に、捕まり損ね、覚然は、一生に一度の生命びろいをして、虎口をのがれたというのである。