Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Lesen Sie 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.012 Zeichen · 245 Bildschirme
かれは、わけもなく、つらい、悲しい、嗚咽にせかれた。そしてもう十六、七ともなったころには、自然、年に似合わぬませた眼で、母の胸を臆測した。
(もし、子どもさえいなかったら? ……母は、どうするつもりだろう)と。
母は、父に嫁いだのを、後悔している。ままになるなら、今でも別れたいのだろう。そして、離別して、おそまきにでも、栄花のできる世界へ帰り、よく口ぐせにいう親類の公卿仲間の女たちのように、月を簪し、花を着て、牛車に乗りあるき、あの少将、この朝臣と、浮かれ男相手に恋歌などを取り交わして、源氏物語の中の女性みたいな生活を、一ぺんでもしてみたい。そうでもなければ、死にきれない。女と生まれたかいもない。――と、あんなふうに、おりおり、油紙に火がつくものにちがいない。
無条件に母を母と信じきれないで、母を観察する眼ばかり日々養われている子の不幸は、いうまでもなかった。
(……ふん。おれたちが、そんなに邪魔か、ならば、出て行けばよいだろうに。いや、父上も父上だ。なんで、こらえてばかりいるのか。焦れったいなあ……。くそったれめ。藤原がなんだ。藤家の一族に親類があるからとて、あんなにまで、威張りちらされている父上のお気が知れぬわ……。