Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
――然し退屈男の眼はそのまにもキラリキラリと鋭く光りつづけました。掏摸とった小判はどこに持っているか? 胸の脹らみ、腰の脹らみ? だが、腰にも胸にも成熟した娘の匂やかさはあっても、小判らしい包みはないのです。ないとしたら――あの手をやったのだ。スリ取った金は途中で道のどこかにかくしておいて、ひと目のない時に掘り出す彼等の常套手段を用いているに違いないのです。――退屈男は、軽く微笑しながら掏摸る機会を与えるように、わざと女の側へ近よると、懐中ぽってりふくらんでいる路銀の上をなでさすりながら、誘いの隙の謎をかけました。
「どうも小判はやはり身の毒じゃ。母様がな、きつい日蓮信者ゆえ、ぜひにも寄進せいとおっしゃって二百両程懐中致してまいったが、腹が冷えてなりませぬわい。――ほほう、襟足に可愛らしいウブ毛が沢山生えてじゃな。のう、ほら、この通り、男殺しのウブ毛と言う奴じゃ。折々は剃らぬといけませぬぞ」
「わたし、あの……そんなこと、知りませぬ。ひとりで参ります。どうぞもう側へ寄らないで下さりませ」
だが女は、退屈男の眼の配りの鋭さにうっかり手出しは禁物と警戒したものか、それともそうやって嬌羞を作っておいて油断させようというつもりからか、くねりと身をくねらせながら長い袂で面を覆うと、逃げるように側から離れました。