Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「ここにおいでか!」
「さようでござります。伝通院自慢の裏書院でござります。今もまだたしかにおいでの筈、手前の役目はこれで終りました。どうぞごゆっくり……」
言いすてかとみるまに、もう一二間向うでした。
躊躇はない。京弥は脇差し、菊路は懐剣、にぎりしめながら高縁におどりあがって、ガラリと左右からぬり骨障子をあけた刹那、――あッとおどろいてふたりは棒立ちになりました。書院というは名ばかり、几帳、簾垂れ、脇息、褥、目にうつるほどのものはみな忍びの茶屋のかくれ部屋と言ったなまめかしさなのです。
しかも、その几帳のわきには女がいるのです。年の頃二十二三。青ざおとした落し眉に、妖しき色香がこぼれんばかりにあふれ散って、肉はふくらみ、目はとろみ、だが只の女ではない。姿、容子、化粧の奢り、身分のあるもののおてかけか寵姫か、およそ容易ならぬ女でした。
その女の膝へまた主水之介が何と穏やかならぬことか、江戸にゆかりの眉間傷を軽くのせて、この世の極楽ここにありと言いたげに、悠々と膝枕の夢を結んでいるのでした。のみならず不思議なのはその女です。さぞやおどろくだろうと思いのほかに、気色ばんでふたりが闖入したのを見眺めると、ことさらに主水之介の首のあたりを抱きすくめながら、恋をえたことを見せびらかそうとでもするかのように、淫花のごとく