Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
公は至っての御血筋思い、甚だこれを不憫に思召されて、忽ち書き与えたのが次のごとき御墨付です。
「長沢松平家は宗祖もこれをお目かけ給いしところ、爾今諸大名は、東海道を上下道中致す場合、右長沢家に対して、各その禄高に相当したる挨拶あって然る者也。――諄和、奨学両院の別当、征夷大将軍、源家光」
という物々しい一札なのです。まことにどうもこのお墨付の、相当したる挨拶というその挨拶の二字くらい、おびただしく意味深長な文字はない。征夷大将軍が城持ち大名に対って特に挨拶せいとのお声がかかったのであるから、今日は、さようなら、また会いましょう、失敬、なぞのなまやさしい挨拶では事が済まないのです。十万石は十万石並に、五十万石は五十万石並に、それぞれふところ工合に応じた挨拶をしなければならないのであるから、喜んだのは長沢松平家でした。いわゆる西国大名と名のつく大名だけでも、優に百二三十藩くらいはあるに相違ないのであるから、参覲交替の季節が訪れると共に、街道を上下の大名行列が数繁くなるや、忽ち右の「挨拶」が御陣屋の玄関に山をなして、半年とたたぬうちに御金蔵が七戸前程殖えました。