Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
すると、間もなく、姉が帰って来て、家の者らがちりちりに生活しなくてもいいようになると思われた。しかし金剛石ではないと思うと金剛石ではないような気がして淋しくなった。
外が真暗(まっくら)になってから家の中へ入った。やはり来ていたのは刺繍の先生であった。米のその夜の夕餉(ゆうげ)の様は常日とは変っていた。餉台(ちゃぶだい)は奥の間へ持って行かれたし、母が先生の傍(そば)へつききりなので彼は台所の畳の上で独人(ひとり)あてがわれた冷(ひ)やっこい方の御飯をよそって食べ始めた。初めの裡(うち)は牛肉を食べたかったので、母が持って来てくれるまでに御飯を食べてしまわないようと少しずつ遅くかかって食べ出したが、何日(いつ)の間(ま)にかお腹が膨(ふく)れて来た。
彼が食べ終った頃、母が奥から米の傍へ皿を取りに出て来た。
「お漬物(ここ)は。」と米は訊(たず)ねた。
「うむ? うむ。」と母はいった。
「お漬物何処(ここどこ)、お母さん。」と少し米が大きな声を出すと母は「はいはい、今あげますよ。」といって奥へ行った。しかし幾ら待っても母は出て来なかった。その中(うち)に米はもう漬物(つけもの)の事を忘れてしまって箸(はし)のさきを濡らしては板の間へせっせと兵隊の画を描き初めた。