Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
「あら」と、お六は袖口で頬を押えながら笑った。「そんなに紅くなっていますか。今ここのお部屋で無理に茶碗で一杯飲まされたもんですから」
彼は武家屋敷の中間部屋へ出入りをする物売りの女であった。かれの提げている重箱の中には鮓や駄菓子のたぐいを入れてあるが、それを売るばかりが彼等の目的ではなかった。勿論、美い女などは決していない。夜鷹になるか、提重になるか、いずれにしても不器量の顔に紅や白粉を塗って、女に飢えている中間どもに媚を売るのが彼等のならわしであった。ここで提重のお六に出逢ったのは勿怪の幸いだと思ったので、半七は摺り寄って小声で訊いた。
「お前、この杉野様の部屋へも出入りをするんだろう」
「いいえ。あたし、あのお屋敷へは一度も行ったことはありませんよ」
「そうか……」と半七は少し失望した。
「だって、あすこは名代の化け物屋敷ですもの」
「ふうむ。あすこは化け物屋敷か」と、半七は首をかしげた。「そうして、あの屋敷へ何が出る」
「なにが出るか知りませんけれど、いやですわ。ここらで朝顔屋敷といえば誰でも知っていますよ」
朝顔屋敷――その名を聞いて半七は思い出した。