Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
どうも有難うございます」
二人が頻りに礼をいう声をうしろに聞き流して、半七は早々にそこを立ち去った。なんだか落ち着かないような平助の眼の色と、近いうちにまとまった金がはいるという又蔵の噂と、朝顔屋敷の怪談と、半七はこの三つを結びあわせていろいろに考えたが、すぐには取り留めた分別も浮かび出さなかった。彼はふところ手をしてぼんやりと九段の坂を降りた。
家へ帰って長火鉢のまえに坐って、灰を睨みながらじっと考えているうちに、冬の短い日はもう暮れかかった。半七は早く夕飯を食って、九段の長い坂をもう一度あがって、裏四番町の横へはいると、どこの屋敷の甍もゆうぐれの寒い色に染められて、呪いの伝説をもっている朝顔屋敷の大きな門は空屋のように閉まっていた。半七は門番のおやじにそっと声をかけて訊いた。
「お部屋の又蔵さんはいますかえ」
又蔵はたった今、門番にことわって表へ出たが、きっと近所の藤屋という酒屋へ飲みに行ったのであろうとのことであった。中小姓の山崎さんはと訊くと、これも昼間出たぎりでまだ帰らないと門番が教えてくれた。半七は礼を云って表へ出ると、路の上はすっかり暗くなって、遠い辻番の蝋燭の灯が薄紅くにじみ出していた。