Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
「おや、いらっしゃい。御参詣でございますか。当年は残暑がきびしいので困ります」
「その樒を少し下さい。あの、踊りの師匠の歌女代さんのお墓はどこですね」
要りもしない花を買って、半七は歌女代の墓のありかを教えて貰った。そうして、その墓には始終お詣りがあるかと訊いた。
「そうでございますね。最初の頃はお弟子さんがちょいちょい見えましたけれど、この頃ではあんまり御参詣もないようです。毎月御命日に欠かさず拝みにお出でなさるのは、あの経師職の息子さんばかりで……」
「経師職の息子さんは毎月来るかね」
「はい、お若いのに御奇特なお方で……。きのうもお詣りに見えました」
手桶に水と樒とを入れて、半七は墓場へ行った。墓は先祖代々の小さい石塔で、日蓮宗の歌女代は火葬でここに埋められているのであった。隣りの古い墓とのあいだには大きい楓が枝をかざして、秋の蝉が枯れ枯れに鳴いていた。墓のまえの花立てには、経師職の息子が涙を振りかけたらしい桔梗と女郎花とが新しく生けてあった。半七も花と水を供えて拝んだ。拝んでいるうちに何かがさがさという音がひびいたので、思わず背後をみかえると、小さい蛇が何か追うように秋草の間をちょろちょろと走って行った。