Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
「屋敷の奴が殺ったんじゃあるめえな」
「そうでしょうか」
「これだけの広い屋敷だ。おまけに近所に遠い一軒家も同様だ。妾をやっつける気があるなら、屋敷の中でやっつけるか、帰る途中をやっつけるか、何もわざわざ当人の家まで押し掛けて行くには及ばねえ。誰が考えてもそうじゃねえか」
「そうですねえ。じゃあ、きょうは無駄足でしたか」と、松吉は詰まらなそうな顔をしていた。
「だが、まあいいや、久し振りでこっちへ登って来たから、鬼子母神様へ御参詣をして、茗荷屋で昼飯でも食おうじゃねえか」
二人は田圃路を行きぬけて、鬼子母神前の長い往来へ出ると、ここらの気分を象徴するような大きい欅の木肌が、あかるい春の日に光っていた。天保以来、参詣の足が少しゆるんだとはいいながら、秋の会式についで、春の桜時はここもさすがに賑わって、団子茶屋に団扇の音が忙がしかった。すすきの木菟は旬はずれで、この頃はその尖ったくちばしを見せなかったが、名物の風車は春風がそよそよと渡って、これも名物の巻藁にさしてある笹の枝に、麦藁の花魁があかい袂を軽くなびかせて、紙細工の蝶の翅がひらひらと白くもつれ合っているのも、のどかな春らしい影を作っていた。