Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
市之助も彼を面白い奴だと云った。
無事に関所を越えて小田原の駅につくと、喜三郎は今夜も一緒に泊めてくれと云った。かれは主従を立場に休ませて置いて、自分ひとりが駈けぬけて駅へはいったが、やがて又引っ返して来て、今夜は本陣にふた組の大名が泊っている。脇本陣にも一と組とまっている。そんな混雑の宿へ泊るよりも普通の旅籠屋へ泊った方が静かでよかろう。自分は松屋という宿を識っているから、そこへ御案内したいと云った。
いくら御用の道中でも、本陣に泊るのは少し窮屈である。本陣に泊っては女を呼ぶわけにもゆかない。酔って騒ぐわけにもゆかない。箱根を越せばもう江戸だと思うにつけても、窮屈な本陣の古ぼけた屋敷に押し込まれるよりも、普通の小綺麗な旅籠屋に泊って、ゆっくりと手足をのばして旨い酒でも飲みたいと七蔵は思った。すこし渋っている主人を無暗にそそり立てて、彼は喜三郎が知っているという普通の旅籠屋に泊ることに決めさせて、三人はその松屋にはいった。
「失礼でございますが、今夜はわたくしが山祝いをいたしましょう」と、喜三郎は云った。
旅人が無事に箱根を越せば、その夜の宿で山祝いをするのが当時の習いであるので、本来ならば主人の市之助から供の二人に三百文ずつの祝儀をやって、ほかに酒でも振舞うべきであった。