Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
顔にかけてある手拭を少しまくって、かれはその死に顔をちょっと覗いて、隅の方へ引きさがると、お留は茶を持って来て、ふたたび丁寧に会釈した。
「おなじみ甲斐にどうもありがとうございました。仏もさぞ喜ぶでございましょう」
「失礼ですが、おまえさんはこちらのおかみさんですかえ」
「はい。徳次郎の嫂でございます」と、彼女は眼をしばたたいていた。「徳蔵もほかにこれという身寄りも無し、あれ一人をたよりにしていたのでございます」
「かえすがえすも飛んだことで、実にお察し申します」
半七は繰り返して悔みを述べて、それからだんだん訊き出すと、徳次郎は九つの春から山城屋へ奉公に出て、今年で足かけ八年になる。年の割には利巧で、児柄もいい。ことしの正月の藪入りに出て来た時に、となりの足袋屋のおかみさんが彼を見て、徳ちゃんは芝居に出る久松のようだと云ったら、かれは黙って真っ紅な顔をしていた。そんなことも今では悲しい思い出の一つであると、お留はしみじみ云った。
何分にもほかに幾人も坐っているので、半七はその以上に斬り込んで訊くことも出来なかった。おとむらいはと訊くと、きょうの七ツ(午後四時)に深川の寺へ送るのだとお留は答えた。