Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
裏は案外ひろい空地になっていて、井戸のそばには夏の日よけに植えたらしく、葉のない一本の碧梧が大きい枝をひろげていた。その梧の木を背中にして、お留がなにか小声で亭主と話していたが、その様子がどうも穏やかでないらしく、普通の相談事でないように見えたので、半七は半分しめ切ってある腰高の障子に身をかくして、二人の様子をしばらく窺っていると、夫婦の声は少し高くなった。
「だからおまえさんは意気地がないよ。一生に一度あることじゃないじゃないか」と、お留は罵るように云った。
「まあ、静かにしろよ」
「だってさ。あんまり口惜しいじゃあないか。こうと知ったら、わたしが行けばよかった」
「まあいいよ。人にきこえる」
徳蔵は女房をなだめながら、思わずうしろを見ると、その眼があたかも半七と出合った。そんなことに馴れている半七は、そこにある手桶の水を柄杓に汲んで飲むような振りをして、早々に元のところへ帰って来た。夫婦もやがて帰って来たが、お留の顔色は前より悪かった。ときどき嶮しい目をして忌々しそうに利兵衛を睨んでいるのが半七の注意をひいた。
やがて葬式が出る時刻になって、三十人ほどの見送り人が早桶について行った。