Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
町役人立合いで検査したが、半鐘にはなんの異状もなかった。その自然に鳴り出すのは夜に限られていた。
不思議を信ずることの多いこの時代の人達にも、まさか半鐘が自然に鳴り出そうとは思えなかった。殊に人が見張っているあいだは決して鳴らないのに因っても、それが何者かの悪戯であることは誰にも想像された。おいおいに冬空に近づいて、火というものに対する恐れが強くなって来たのに付け込んで、何者かが人を嚇すつもりでこんな悪戯をするに相違ないと思った。しかもそのいたずら者が発見されないので、諸人の心は落ち着かなかった。たとい人間の悪戯にしても、こんな事が毎晩つづくのは、やがてほんとうの大火を喚び起す前兆ではないかとも危ぶまれた。気の早いものは荷ごしらえをして、いつでも立ち退くことができるように用心しているものもあった。老人を遠方の親類にあずけるものもあった。藁一本を炙べた煙りもこの町内の人々の眼に鋭く沁みて、かれらの尖った神経は若い蘆の葉のようにふるえ勝ちであった。もうこうなっては、自身番や番太郎の耄碌おやじを頼りにしていることは出来なくなったので、仕事師は勿論、町内の若いものも殆ど総出で、毎晩この火の見梯子を中心にして一町内を警戒することになった。