Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
その声を聞いて近所の人達が駈け付けたときには、お北はもう正気を失っていた。跳ねあがった溝板で脾腹を強く突かれたのであった。
家へかつぎ込まれて、介抱を受けて、お北はようよう息をふき返した。当時のことは半分夢中でよくは記憶していなかったが、ともかくも傘が不思議に重くなって、その傘がまた自然に裂けて、何者にか頭を引っ掴まれたことだけは人に話した。町内の騒ぎはまた大きくなった。
「町内には化け物が出る」
こんな噂がひろがって、女子供は日が暮れると表へ出ないようになった。ふだん聞き慣れている上野や浅草の入相の鐘も、魔の通る合図であるかのように女子供をおびえさせた。その最中にまた一つの事件が起った。
それはお北が眼に見えない妖怪におびやかされてから五日ほど後のことであった。初冬の長霖がようやく晴れたので、どこの井戸端でもおかみさん達が洗濯物に忙がしかった。どこの物干にも白い袖や紅い裳のかげが、青い冬空の下にひらひらと揺れていた。それも日の暮れる頃には次第に数が減って、印判屋の物干にかかっている小児のあかい着物二枚だけが、正月のゆうぐれに落ち残った凧のように両袖を寒そうに拡げていた。