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Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

夜はその夜も眠りにくかった。

十二時頃夕立がした。その続きを彼は心待ちに寝ていた。

しばらくするとそれが遠くからまた歩み寄せて来る音がした。

虫の声が雨の音に変わった。ひとしきりするとそれはまた町の方へ過ぎて行った。

蚊帳をまくって起きて出、雨戸を一枚繰った。

城の本丸に電燈が輝いていた。雨に光沢を得た樹の葉がその灯の下で数知れない魚鱗のような光を放っていた。

また夕立が来た。彼は閾の上へ腰をかけ、雨で足を冷やした。

眼の下の長屋の一軒の戸が開いて、ねまき姿の若い女が喞筒へ水を汲みに来た。

雨の脚が強くなって、とゆがごくりごくり喉を鳴らし出した。

気がつくと、白い猫が一匹、よその家の軒下をわたって行った。

信子の着物が物干竿にかかったまま雨の中にあった。筒袖の、平常着ていたゆかたで彼の一番眼に慣れた着物だった。その故か、見ていると不思議なくらい信子の身体つきが髣髴とした。

夕立はまた町の方へ行ってしまった。遠くでその音がしている。

「チン、チン」

「チン、チン」

鳴きだしたこおろぎの声にまじって、質の緻密な玉を硬度の高い金属ではじくような虫も鳴き出した。