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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

そのいい分も、一応は立つが、まんざら、そうばかりともいえない。やはり妙な階級意識が、兵隊の生命を軽く見る傾向を生じたのではあるまいかと思われる。夜中に病人が変なことになると、その幕舎を受持っている衛生兵は、まず僕を起しに来る。直接軍医のところへ行っても、相手にしてくれないからである。僕が軍医に起きて貰って、一緒に患者を見舞うのだった。

具体的の例をあげよう。一人の兵隊が、夜中の一時ごろに、変な風になった。マラリアの熱が頭に来たらしく、青年学校の校長がどうしたとか、灯火が暗いから蝋燭をつけろとか、大声でわめくのである。それでありながら、自分が病院にいることは知っていて「衛生兵殿」と呼びかけては、何かと哀訴嘆願する。僕にして見れば可哀相で仕方がない。何とかしてやれないものかと思うが、軍医殿は平気らしく、事実手の打ちようがないのかも知れないが、優しい言葉ひとつかけるでもない。下らない素人のセンティメンタリズムか人道主義かは知らぬが、同じ日本人が、同じ捕虜という境遇に陥って、高熱のために頭が変になっている――この患者は両三日後に死亡した――のに対して、無関心でいることが科学的の態度であるならば、僕はそんな科学はすててしまった方がいいと思う。