Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

風がビュービュー吹いて、テントの布をバタバタいわせる夜半、裸蝋燭を手でかこって、こんな病人が狂うのを見ると、まったく暗い気持にならざるを得ない。同時に僕は、しばしばワルト・ウィットマンを思った。何もウィットマンを気取った訳ではないが、ウィットマンも何度かこんな経験をしたのだな……と考え、かつて平和の日、わざわざキャムデンまで彼の旧宅を見に行ったことなど思い出した。

別の病人は、朝の四時ごろ、きまって変なことをいい出すのだった。自分の左脚が細く細くなり、見ているうちになくなってしまうという恐怖を、九州弁で説明する。「見て下さい。脚がなくなるではありませんか。早くどうかして下さい」と泣声を立てる。医療的には、どうすることも出来ないのかも知れず、また相手になることは、却って悪影響をおよぼすのかも知れないが、狂っていても話せば分るので「大丈夫、そんなことはない」というと「でも、見ている内に無くなります。ああ、もう無くなってしまいました」と泣くのである。僕は夜光時計を見せた。「今、五時ちょっと前。六時半には朝飯を持って来てあげる。朝飯を食えば、君の脚はもと通りになるから、安心していたまえ」