Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

けれども言語は普通の英吉利人と少しも違ったところがない。引き移った当日、階下から茶の案内があったので、降りて行って見ると、家族は誰もいない。北向の小さい食堂に、自分は主婦とたった二人差向いに坐った。日の当った事のないように薄暗い部屋を見回すと、マントルピースの上に淋しい水仙が活けてあった。主婦は自分に茶だの焼麺麭を勧めながら、四方山の話をした。その時何かの拍子で、生れ故郷は英吉利ではない、仏蘭西であるという事を打ち明けた。そうして黒い眼を動かして、後の硝子壜に挿してある水仙を顧りみながら、英吉利は曇っていて、寒くていけないと云った。花でもこの通り奇麗でないと教えたつもりなのだろう。

自分は肚の中でこの水仙の乏しく咲いた模様と、この女のひすばった頬の中を流れている、色の褪めた血の瀝とを比較して、遠い仏蘭西で見るべき暖かな夢を想像した。主婦の黒い髪や黒い眼の裏には、幾年の昔に消えた春の匂の空しき歴史があるのだろう。あなたは仏蘭西語を話しますかと聞いた。いいやと答えようとする舌先を遮って、二三句続け様に、滑らかな南の方の言葉を使った。こういう骨の勝った咽喉から、どうして出るだろうと思うくらい美しいアクセントであった。