Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして、足は一文字に用のある方へ運んで行く。あたかも往来は歩くに堪えん、戸外はいるに忍びん、一刻も早く屋根の下へ身を隠さなければ、生涯の恥辱である、かのごとき態度である。

自分はのそのそ歩きながら、何となくこの都にいづらい感じがした。上を見ると、大きな空は、いつの世からか、仕切られて、切岸のごとく聳える左右の棟に余された細い帯だけが東から西へかけて長く渡っている。その帯の色は朝から鼠色であるが、しだいしだいに鳶色に変じて来た。建物は固より灰色である。それが暖かい日の光に倦み果てたように、遠慮なく両側を塞いでいる。広い土地を狭苦しい谷底の日影にして、高い太陽が届く事のできないように、二階の上に三階を重ねて、三階の上に四階を積んでしまった。小さい人はその底の一部分を、黒くなって、寒そうに往来する。自分はその黒く動くもののうちで、もっとも緩漫なる一分子である。谷へ挟まって、出端を失った風が、この底を掬うようにして通り抜ける。黒いものは網の目を洩れた雑魚のごとく四方にぱっと散って行く。鈍い自分もついにこの風に吹き散らされて、家のなかへ逃げ込んだ。

長い廻廊をぐるぐる廻って、二つ三つ階子段を上ると、弾力じかけの大きな戸がある。